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分離技術の基礎知識

コアレッサーとセパレーターとは?油水分離の仕組みと選び方を徹底解説

石油化学や石油精製の現場では、原油やプロセス液に水分が混入することは避けられません。水分が残留すると、触媒の劣化や腐食、製品品質の低下につながり、設備トラブルやコスト増加の要因にもなります。エマルジョン(分散質・分散媒が共に液体である懸濁液 )は、従来の重力分離や遠心分離では、効率的な分離が難しくなる場面もあります。

こうした課題の解決策として採用されているのが「油水分離フィルター方式」です。油中の微細な水滴(あるいは水中の微細な油滴)を、単なるろ過だけで取り除くのは簡単ではありません。そこで、液滴を凝集(粗大化)させ、比重差で分離しやすい状態へ導く技術が活用されます。

本記事では、弊社が石油化学プラント向けフィルターを手がけてきた経験を踏まえ、コアレッサーとセパレーターの原理、選定のポイントまで詳しく解説します。

※油水分離フィルター全般の基礎知識(一般的なフィルターとの違い、選定の考え方など)については、「油水分離フィルターって何?普通のフィルターとはどう違う?」で解説していますので、あわせてご参照ください。

そもそもコアレッサーとセパレーターって何をするためのもの︖

コアレッサーとセパレーターのイメージ

コアレッサーとセパレーターは、油水分離フィルターの中核を担うカートリッジ(エレメント)です。両者を組み合わせることで、エマルジョン状態の油(溶剤)と水を、より安定して分離しやすくなります。

ここでのポイントは、「細かい目で止める」よりも「液滴を育てて分ける」という発想にあります。油水分離フィルター方式では、液滴凝集 → 比重差分離という流れを短縮し、装置として成立させていきます。

コアレッサーとは

コアレッサーカートリッジの構造
コアレッサーによる油水分離の流れ

コアレッサーは、油中に微小に分散した遊離水滴を粗大化(凝集)させる油水分離フィルターです。

【基本の流れ】

  1. 油水混合液をコアレッサーカートリッジにIN→OUTで圧送
  2. ろ材内部で微細な水滴を捕捉し、液滴同士を接触させて粗大化
  3. 粗大化した水滴を、比重差を活用して装置内で分離しやすい状態へ導く
  4. 分離した油は装置上部から排出し、分離した水は装置下部に溜めて排出弁で抜く

※水中の油分離(逆相)についても、同様の原理で対応可能です。対象液や液滴状態(遊離・分散・乳化)によって挙動も変わるため、前提条件の整理が欠かせません。

【凝集メカニズムのポイント】

  • 流速の影響:流速が速すぎると水滴が安定せず、凝集が進みにくい
  • 温度条件:温度によって2液の粘度差や密度差が変化し、凝集のしやすさに影響を与える
  • 界面活性剤の影響:洗浄液などに含まれる界面活性剤は水滴の分散を助長するため、フィルター設計や運転条件での対策が必要になる

セパレーターとは

セパレーターの仕組みと通液方向

セパレーターは、コアレッサーで凝集・沈降しきれなかった遊離水滴を分離し、分離状態を仕上げる後段要素として使われることが多いカートリッジです。

【基本の流れ】

  1. コアレッサーカートリッジとセパレーターカートリッジを装置内で連結して使用する
  2. コアレッサーにIN→OUTで圧送し、微小な遊離水滴を粗大化させる
  3. その後、沈降しきれなかった遊離水滴を分離するため、セパレーターにOUT→INで通液する
  4. セパレーター側は撥水性などの表面特性を利用して同伴水滴を抑え、装置下部に水を集めて排出

セパレーターは「最後の仕上げ」として効く場面が多く、分離精度が厳しい場合に検討されやすい構成です。一方で、どの程度まで必要かは処理液の流量・温度・エマルジョンの状態によって変わってきます。

コアレッサーとセパレーターの違い

コアレッサーとセパレーターのどちらが必要なのか、何が違うのかについては、役割分担で考えると整理しやすくなります。

項目 コアレッサー セパレーター
主な機能 微小液滴の捕捉・凝集(粗大化) 凝集後の取りこぼし抑制・仕上げ分離
設置位置 前段(第1ステージ) 後段(第2ステージ)
通液方向(代表例) IN → OUT OUT → IN
分離の考え方 液滴を育て、比重差分離を
起こしやすくする
同伴液滴を抑え、
分離状態を安定化させる
向いている状況 分散滴が多い
静置が効かない
高速処理したい
分離レベルを一段引き上げたい
後段の水分残留を抑えたい

判断の目安としては、まずコアレッサーで成立するかを見立て、必要に応じてセパレーターを追加する流れが現実的です。分離精度の要求が高いほど、2段構成のメリットが出やすい傾向にあります。

なお、セパレーターと単独で使用するケースもあり、以下のイメージで使い分けるのが理想です。
コアレッサー&セパレーター方式:油大量系で、油の粘度がA重油より低い場合に適用。
コアレッサー方式:水大量系、または油大量系で、油の粘度が高粘度の場合に適用。
セパレーター方式:溶剤回収装置、軽油燃料の供給システム等で使用。

コアレッサーの分離原理

コアレッサーによる油水分離は、次の4ステップで理解すると流れがつかみやすくなります。

  1. 微細水滴の捕捉
  2. 水滴の凝集(液滴凝集)
  3. 重力沈降(または上昇)
  4. 二層分離と排出(インターフェース管理)

ここでは、油中水分除去のメカニズムを中心に説明します。

1.微細水滴の捕捉

油水混合液がコアレッサーフィルターのろ材(ファイバーマット、グラスファイバー束など)を通過する際、微細水滴が繊維表面に捕捉されます。捕捉は「ふるい」だけで決まるものではなく、繊維構造・表面特性・流れの作り方が効く場面もあります。

2.水滴の凝集(液滴凝集)

捕捉された液滴は、流れの中で次々に供給される液滴と接触し、表面張力の働きで合体しやすくなります。結果として、ミクロンオーダーの液滴がミリオーダーへ成長し、比重差分離が起こりやすい状態へ近づきます。

3. 重力沈降(または上昇)

粗大化した液滴は、カートリッジ外側で比重差により沈降(油中の水)または上昇(水中の油)し、層を作り始めます。粘度が高いほど沈降・上昇は遅くなりやすく、温度や流量によって分離の進み方が変わることもあります。

4. 二層分離と排出(インターフェース管理)

装置内で油層(上部)と水層(下部)が形成され、インターフェース(界面)が安定すると二層分離が成立します。上部の油は次工程へ、下部の水は排水弁で抜く流れが一般的です。

選定前に整理すべき5つの条件

コアレッサー・セパレーターの最適な仕様を選ぶには、次の5条件を先に整理しておくと進めやすくなります。

  1. 処理流量と装置サイズ
  2. 温度・粘度・比重差
  3. 界面活性剤・乳化(エマルジョン)・破乳
  4. 許容圧力損失(ΔP)と運転レンジ
  5. 必要な分離レベル

ここが曖昧なままだと、分離のばらつきや圧力損失(ΔP)の増大、交換頻度の悪化につながることもあります。順番に見ていきましょう。

1. 処理流量と装置サイズ

まず必要な処理流量(L/min、m³/h)を決め、カートリッジ本数とベッセル(ハウジング)サイズを当てにいきます。流量が大きいほど、滞留時間(分離のための時間)や流速(せん断)の影響も出やすくなります。単純に本数を増やすだけでなく、装置内の層分離スペースまで含めて設計するのがポイントです。

【チェックしたい項目】

  • 通常流量/最大流量/変動幅
  • バッチか連続か(運転時間、停止頻度)
  • 設置スペース(省スペース要求)
  • 将来の増産・増流量の見込み

2. 温度・粘度・比重差

処理液の物性は、分離性能に直結します。低温で粘度が上がると沈降が遅れ、温度が上がると粘度が下がって分離が進みやすい場合もあります(耐熱・安全は別途確認が必要になります)。

【チェックしたい項目】

  • 運転温度(季節変動や起動停止時も含む)
  • 粘度レンジ(温度依存)
  • 比重差の大小(分離の駆動力)

高粘度液では、加温や滞留の確保、流速の見直しが鍵になるケースも見られます。

3. 界面活性剤・乳化(エマルジョン)・破乳

油水分離の難易度を上げやすいのが乳化です。界面活性剤の存在や混合条件によって液滴が安定化し、凝集が進みにくくなる場合があります。

【チェックしたい項目】

  • 白濁しているか(乳化により、微細液滴が安定した可能性)
  • 静置しても界面が立ちにくいか
  • 洗浄工程・アルカリ洗浄などで界面活性剤が入りやすいか

【対策の考え方】
乳化により、微細液滴が安定したと疑われるときは、「運転条件の調整」「前処理」「段構成」のどこで手当てするかを整理すると進めやすくなります。

  • 運転条件の調整:流量(流速)を見直し、過度なせん断で再分散していないか確認します。温度条件もあわせて整理すると、粘度低下により分離が進みやすくなる場面があります。
  • 前処理(破乳):必要に応じて脱乳化剤(破乳剤)の検討やpH調整を行い、液滴が合体しやすい状態へ寄せます。まずは小スケールで相性を確認すると安心です。
  • 段構成の見直し:コアレッサー単独でばらつきが出る場合、セパレーターを後段に入れて同伴水滴を抑え、分離状態を安定化させる方法も選択肢になります。

乳化は、ろ材だけで解決するというより、工程条件と組み合わせて“分離しやすい状態”を作るテーマとして捉えると整理しやすいです。

4. 許容圧力損失(ΔP)と運転レンジ

圧力損失(ΔP)は、ポンプ能力・運転コスト・カートリッジ寿命に関わる重要な指標です。油水分離フィルターは運転に伴ってΔPが変化するため、監視と判断基準(どこで交換するか)を先に決めておくと運用が安定しやすくなります。

【チェックしたい項目】

  • 設備側の許容ΔP(ポンプ余裕、配管条件)
  • ΔP監視方法(差圧計、アラーム設定など)
  • 固形粒子の有無(目詰まり要因)
  • 洗浄・前段ろ過の必要性

5. 必要な分離レベル

最終的に求める分離レベル(水分残留や油分残留、外観基準など)を明確にします。ここが曖昧だと、過剰仕様でコストが上がったり、逆に不足して品質問題につながったりすることもあります。

【整理の仕方】

  • 目的:溶剤回収/製品品質の安定化/排水処理(放流)など
  • 指標:水分、油分、白濁、下流トラブルの有無
  • 許容:どこまでなら工程として許されるか

「どこまで落としたいのか」が決まると、コアレッサー単独か、セパレーター併用かの判断もつけやすくなります。

コアレッサー・セパレーターの用途と導入事例

コアレッサーとセパレーターは、溶剤回収や製品精製など、化学分野を中心にさまざまな工程で活用されています。ここでは一般的な用途を整理しつつ、弊社が公開している導入事例もあわせてご紹介します。

用途1.石油精製(コアレッサー×セパレーター)

微細な水滴が残りやすく、分離精度を一段引き上げたい工程では、コアレッサーで液滴を粗大化し、後段のセパレーターで同伴水滴を抑える2段構成が選ばれることがあります。
以下は、コアレッサー×セパレーター構成による油水分離の適用例です。

LPG中の水分離の事例

用途2.石油化学(コアレッサーのみ)

処理液の状態や目標分離レベルによっては、コアレッサー単独でも分離が成立するケースがあります。構成がシンプルなため、運用しやすい点も特徴です。
以下は、コアレッサーのみで対応した適用例を紹介しています。

エチルベンゼン中の水分離

用途3.化学分野(コアレッサーのみ)

※新事例:トルエン再生回収システムにおける「トルエン中の水」および「水中のトルエン」の分離

おまけ:他社ハウジングを転用した互換カートリッジも!

他社ハウジング向け互換カートリッジ

通常、油水分離では装置とカートリッジが1セットとなっており互換できないことが多いですが、ユーテック®は他社カートリッジの仕様から互換できる品番を製作し、一部、品番対応一覧までご用意しております。

もちろん対応一覧にない品番も現行品を分析した上で新たに試作・製作可能ですので、ぜひお問い合わせください。

よくある質問(FAQ)

コアレッサー・セパレーターに関するよくある質問とその回答をまとめています。

Q1. セパレーターは装置のことですか?カートリッジのことですか?

A.文脈によって意味が変わります。一般用語としては分離器(装置)を指す場合もありますが、油水分離フィルターの文脈では後段のセパレーターカートリッジ(要素)を指すことが多いでしょう。

Q2. コアレッサーとセパレーターは、どう使い分ければよいですか?

A.まずコアレッサーで成立するかを見立て、必要に応じてセパレーターで仕上げる流れが一般的です。乳化の強さ(界面活性剤)、流量変動、要求分離レベル、分離のばらつきが判断材料になります。

Q3.コアレッサーが効かない(分離が安定しない)原因は何でしょうか?

A.代表的な要因として、流量が高すぎて凝集時間が足りない、温度が低く粘度が高い、乳化が強い、固形粒子が多く目詰まりや再分散が起きている、といった点が挙げられます。原因が複合しているケースもあるため、処理液の状態(遊離/分散/乳化)と運転条件をセットで確認するのが確実です。

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弊社の油水分離フィルター「ユーテック®FS」は、エマルジョン・乳濁液中の微小液滴を粗大化させて高速分離できるコンパクトなフィルターシステムで、以下のような特長があります。

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ユーテック®事業は1986年にスタートし、これまでに4,000件以上の納入実績を誇ります。石油精製(LPG中の水分離、LCO中の水分離)、化学(エチルベンゼン中の水分離、香料の精製など)、産業洗浄(自動車‧電機‧精密機器部品の洗浄液中の油分離)など、多岐にわたる分野でお客様にご利用いただいております。

また、分離した溶剤の再利用を可能にすることで、サステナビリティの推進にも貢献しております。

カートリッジ・装置は設計から製造まで一気通貫

弊社では、フィルターカートリッジに加え、装置(ベッセル)を含むシステム全体の設計から製造まで、一貫して対応しております。お客様のプロセス改良に真摯に向き合い、最適なソリューションを提供する体制を整えております。

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※レンタルに際しては、装置の返送費用と使用するカートリッジの費用をご負担いただいております。

まとめ

コアレッサーとセパレーターは、微細な液滴を凝集(粗大化)させ、比重差分離を成立させやすくする油水分離フィルターの中核要素です。うまく選定するには、流量・物性(温度/粘度/比重差)・乳化要因・ΔP・必要な分離レベルを整理し、必要に応じて2段構成を検討すると進めやすくなります。

油水分離装置(油水分離機/油水分離槽の前処理を含む)でお困りの点がありましたら、弊社までお気軽にご相談ください。